
- 誰にでも使える性能
- 頑丈でメンテナンスフリー
- 気軽に購入できる価格
「誰にでも使える性能」と口で言うのは簡単ですが、難しい課題です。色々と検討した結果、Da Ikiの最初のモデルとして、まずは一人乗りのV1をデザインすることとなりました。
V1は海外でも多くのメーカから製品が出されており、研究し尽くされているはずの分野です。しかし、Da Iki開発チームでは問題点を見つけ出しました。それは、Da Ikiの3つの基本コンセプトにどれも当てはまらないということです。
多くのV1はスピードを重視するため6m〜7mと長く、細く作られていますが、この大きさでは子どもや初心者がコントロールするのは難しいでしょうし、持ち運びや保管も大変。「誰にでも使える」カヌーであるためには、もっと手軽な大きさとしなくてはなりません。
ところが、長さを縮めると、浮力を確保するために横幅を広げる必要がありますし、V1本来の特徴であるスピードが犠牲になることも心配。また、見た目のシャープな格好良さも損なわれると懸念されました。
「ポリエチレン(Polyethylene)」とは、原油を蒸留して得られる「ナフサ(Naphtha)」を熱分解することで取り出される「エチレン(Ethylene)」のポリマー、つまり分子をさらに多数結合させたもの。ポリバケツやスーパーの買い物袋など、日本ではプラスティック製品の20%以上がこのポリエチレンによって占められています。
ポリエチレンには熱可塑性という特徴があります。これは加熱することによって融けるという性質で、熱を加えて液状化したポリエチレンを金型へ流し込んで成型することで、様々な形の製品を作ることが出来るのです。FRPのカヌーとの大きな違いは、殆ど自動的に一体成型を行うため、金型の他にも加熱・冷却などを行う巨大な設備が必要ですが、大量生産する場合は製品単価が大幅に削減可能となります。
また、同じポリエチレンでも分子構造によって特性が変化します。カヌーにはリニア・ポリエチレン(直鎖状)やクロスリンク・ポリエチレン(架橋状))と呼ばれる強度に優れた素材が用いられるのです。これらのポリエチレンに、野外や海上での使用に耐えられるよう、紫外線吸収剤や耐候剤といった添加物を混合して用いることで、他の素材とは比較にならない強度、耐久性をもつカヌーが出来上がります。
プラスティック製品を作るには様々な成型方法があります。ただし、「気軽に購入できる金額」を実現するためには、出来るだけ安価に成型しなければなりません。
通常のカヌー製品は強化プラスティック(FRP)で作られています。この方法は、ハンドレイアップやバキュームバギングといった手作業で作られるため、工数が多くなってしまい国産の場合はなかなかコストを抑えることができません。さらに、今回は価格と強度のバランスをとる目的でポリエチレン樹脂を素材として採用することもあり、FRPとは全く異なった成型方法を選ぶ必要がありました。
国内では余り普及していませんが、海外では大型の中空樹脂製品を作るのに最もよく用いられる成型方法があります。これが回転成型(Rotational Molding)。樹脂粉末を投入した金型を360度回転させながら加熱することで、中空の樹脂製品を一体成型することが可能な方法で、実際に海外の多くのカヌー、カヤックがこの成型方法を用いて作られています。
このほかにもポリエチレン樹脂に適した成型方法として、インジェクション(射出)成型やブロー成型というものが存在しますが、いずれも頑丈な金型が必要なため、初期投資も莫大なものとなってしまいます。これに対し、回転成型では金型への圧力がほとんど掛からないため、板金加工による安価な金型で成型でき、固定費が非常に安い。即ち、損益分岐点が低いので、カヌーのような大量生産が想定しにくい製品でも対応可能となるのです。
Da Ikiはパドリング、カヌーサーフィンと色々なコンディションで活用できます。Da Iki開発チームではさらに貪欲に可能性を追求し、セーリング仕様もオプションとして組み込むことを検討しました。
安定性はアウトリガーによって確保されているため、セールを取り付けることは特に問題ありません。しかし、ヨットのようなセールシステムを取り付けるとなると、船体の強度も求められますし、重量も増えて性能に悪影響を及ぼしてしまう。
そこで、着脱が簡単で軽量、操作もシンプルなセールシステムを研究。アドベンチャーレースの強豪チームが採用しているセールシステムにたどり着きました。このセールシステムは左右同じ長さのブーム兼マストを持つスプリット形状で、マストステップもフレキシブルジョイントとなっています。これをカヌーのノーズから張ったショックコードでテンションを掛け、コックピット側で左右のシートを操ることで、自由にセール形状を変えることが出来る優れもの。シンプルな構造ながらも、ランニング〜クローズホールドまで、本格的なセーリングを楽しむことが出来るのです。
スポーツが肉体と精神を健全に保つために役立つのは良く知られていることです。病気や事故などによって身体の一部に不自由がある人達にこそ、スポーツを楽しんで頂きたいものです。
昨今、ユニバーサルデザインという考え方が普及し、障害を持つ方でも様々なスポーツへの挑戦が可能となっています。その中で、Da Iki開発チームが特に注目したのがパラリンピックなどでも良く知られるチェアスキー。トップクラスのアスリート達がメダルを目指して努力する姿は、障害者に連想しがちな暗いイメージを微塵も感じさせない、すがすがしいものですね。
本来、カヌーパドリングは動作が比較的シンプルで身体への負荷も小さいのですが、安全確保や運営方法などの問題が多く、なかなか普及が進みません。常に転覆の可能性がある一般的なカヌーでは、落水後の対応如何では危険な状況が想定されます。また、乗りこなすためのテクニックが必要であったり、安全性を前提とした形状を追求すると性能低下が避けられず、競技性も薄れてしまうのです。
一方、アウトリガーカヌーはもともと荒れ狂う海の中での性能を追い求めた結果、創り上げられた舟です。安全性も航行性能も抜群ですから、ユニバーサルデザインそのものと言えるのではないでしょうか。下肢障害や視覚障害の方でも、多少の工夫でパドリングを楽しむことが可能ですし、国際的にもAdaptive Paddlingという競技種目として国際オリンピック連盟が正式種目としての採用を検討し始めているのです。
Da Iki Va'aは、安定性を更に向上させるため、両サイドにアウトリガーを取り付けるダブルアマ仕様もオプションとして用意しています。また、ラダーが無くても直進性や操作性が確保できる設計のため、完全な下肢障害者でもコントロールの心配は無用です。しかも、他の障害者スポーツと異なり、ほとんど標準仕様のままでカヌーを利用可能なので、手軽に用具を確保できるのも特徴。まさにユニバーサルデザインを体現する製品と自負しています。
アウトリガーカヌーの国際連盟「International Va'a Federation」の競技ルールでは、伝統を重んじるためVa'aすなわちカヌーにはラダーをつけないこととなっています。ラダーがなくてもスキルや経験があればカヌーを自在にコントロール可能でしょうし、そのためにトレーニングするのも競技の観点では当然と言えます。したがってDa Ikiも高い保針性を持たせたデザインとなっています。
とは言え、アウトリガーカヌーのエッセンスを楽しみたい、気軽に海で遊びたいというニーズに立ち戻ると、どうしても「操作の簡単さ」が求められます。そこで、Da Iki開発チームではオプションでフットペダル式のラダーを取り付けられるように設計しました。
このラダーは頑丈なアルミまたはステンレス製で、構造はいたってシンプル。どんなに激しく遊んでも決して壊れないことを前提に設計してあります。特にラダー本体はキックアップ式となっていて、ビーチや浅瀬に乗り上げても自動的に跳ね上がり衝撃をかわしてくれます。
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